ヒナのころから家族の一員として大切に育てたオカメの「ナナ」が
ある秋の日に静かに天国へ旅立ちました。
朝はふつうに食欲もありいつも通りに毛づくろいをしていました。
しかし旅立ちの時は本当に突然やってきました。
家には母しかおらず、ナナは母の手の中で眠るようにゆっくりと目を閉じ
そのまま2度と目覚めることはありませんでした。
母は引き止めるようにずっとナナの名前を呼び続けました。
最後に瞳が閉じられるときナナはたしかに母を見つめたそうです。
その後、ナナを思い出しては涙にくれる日々が続きました。
特に母の悲しみはとても深く、何か私に出来ることはないかと
あらゆる方法を考えました。
あたらしい子をお迎えすることを母が拒絶したため
ナナによく似たぬいぐるみを身近に置いたらどうだろうと考えた私は
母に内緒でインコのぬいぐるみを探しはじめました。
ところが犬や猫のリアルなぬいぐるみはあっても、
インコのそれはどこを探しても見つかりません。
そんな時インターネットで羊毛フェルトのインコの作品に出合いました。
そのリアルさとぬくもりにとても感動したのを鮮明に覚えています。
みよう見まねで制作した私の最初の作品はお世辞にも
「ナナ」にそっくりとはいえない出来栄えでした。
それでも、母にサプライズでプレゼントしたとき
作品を一目見た母が涙で顔をくしゃくしゃにして
「ナナちゃんナナちゃん」と羊毛のナナを抱きしめてくれました。
思わずもらい泣きした私と母が涙しながら交互に
「羊毛のナナ」を抱っこしたことが今も忘れられません。
この時の経験がきっかけとなり作品をつくりはじめました。
それからは、撫でたり抱っこしたりできる素材をさがして
品質の良いテディベアの生地(絨毛)にたどりつきました。
様々なインコの羽色に染め上げるために染色技術を独学で学び
現在のオリジナルのバードフィギュアが生まれました。